まず、文部科学省が官民協働で取り組んでいる留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」のホームページに掲載されている各種調査結果の一部を転載しますので、ご覧ください。
留学にはどんな効果があるの?
語学力だけじゃない!未来を生き抜くチカラが身に付く
留学とひとことで言っても、最近では語学留学だけでなく「国際ボランティア」「インターンシップ」などの実践的な研修やスポーツ、アートなど学ぶテーマも多様化しています。留学を経験したことにより、学生・保護者ともに語学力はもちろん、チャレンジ精神やコミュニケーション能力の向上を感じているようです。
留学で得られる6つの機会
- 知らないことを知り、知りたいことを知る機会
- 外から日本を見る機会
- 違う価値観に触れ、意味を知る機会
- 自分のことや日本を知る、知りたいと思う機会
- 飛び込むことに自信を持つ機会
- 逃げないで苦労する機会
留学で得たこと上位6項目
文部科学省 トビタテ!留学JAPAN 「就活と留学に関する調査」2017年6月
※保護者から見て、留学した我が子が得たと思うことを回答
*調査結果抜粋:文部科学省 トビタテ!留学JAPAN
高校留学を妨げる理由について考えてみる。
これらの調査結果から明らかなように、10代の留学によって磨かれるスキル、知見、経験がその後の人生に大きなメリットをもたらすことは、もはや多くの日本人が認識しています。しかしながら実際には高校生のわずか1%しか留学していないという現実があるのも事実です。では何が高校留学を妨げているのでしょうか。その理由を考えてみたいと思います。
長い間、高校留学の最大の懸案であると考えられていたのは、「高校時代の1年間、日本を離れることは、大学進学準備の上で不利に働くのではないか?」という不安感でした。
しかし、2020年以降の大学入試改革により、大学入試に不可欠な英語力審査は、「話す」「書く」を加えた4技能の試験となり、TOEFLやIELTSに代表される外部英語力テストの結果を提出する方向になることが決まっています。すでに全国の多くの高校でもその対応に真剣に取り組んでおり、校内の英語教育改革はもちろんのこと、数週間の短期語学留学、1学期・1学年留学などを積極的に取り込み、生徒の英語発信力・表現力の向上を高めようとしています。大学、企業に至るまで一貫して地球を舞台に活躍する人材を求めている我が国において、高校留学は大学進学準備の不利になるどころか、不可欠な準備と言っても過言ではなく、もはや、高校留学が1%に留まる大きな理由ではありません。
では、“高校留学に関する保護者の治安面での不安感”はどうでしょうか?
これはやはり留学を思い留まる大きな理由になっているのではないかと思います。国内メディアのニュースを見聞する限りにおいては、現代世界はテロ事件や銃犯罪などの危険な出来事で溢れ、“国外で生活することは、危険と隣り合わせである。”との印象をお持ちになっている保護者が多いのは容易に察しがつきます。世界中の国々の当たり前の日常生活には、ニュース価値はありませんので、平穏な茶の間には、悲惨でセンセーショナルな事件報道が流れます。更には映画やテレビドラマにありがちな派手な銃撃戦シーンなどのおかげで、例えばアメリカに行けば誰もが銃に怯え、びくびくしながら日々を過ごしているのではないかとの印象を私たちは持ってしまいます。でも少し考えてみましょう。もし、アメリカがそんなに危険な国ならば、なぜアメリカから大量の難民がより安全だと思われる国に押し寄せてこないのでしょうか?アメリカの中間層、富裕層はなぜ、お隣のカナダに移住しないのでしょうか?カナダならビザさえも必要ないのに。それは、多くのアメリカ人が自分や家族の安全は、十分にマネージ可能であると考えているからです。毎年、学校内や商業施設での銃事件は起きていますし、それらに巻き込まれないための方策については真剣に考えねばならないものの、アメリカの保護者や子供たちは日常を決して怯えて暮らしているわけではありません。私たちが“新幹線に乗れば殺される”とは考えていないように。
保護者の皆さんには“外国に行けば、可愛い我が子の安全が脅かされる。”という考えではなく、“外国で我が子がどのような行為をし、どのような地域に住むと、危険を招く可能性が高まるのか”という視点で、お子様の留学を考えていただくことをお勧めします。そしてそのための体制を十分に整えている留学プログラムに参加されることをお勧めします。
「高校生活は勉強と部活で忙しく、留学する時間の余裕がない。」こんな理由も度々保護者から耳にします。実際、“日本の高校生は世界一多忙である。”ではないかと思うぐらい、補習授業、部活に学習塾と、多くの高校生が時間に追われた毎日を過ごしています。いったい、それは何のためなのでしょうか?より偏差値の高い大学に入学し、より安定度の高い企業に就職するためなのでしょうか?それが理由ならば、前述したように留学はプラスに働くはずです。あるいは、部活の練習の厳しさに耐えることで精神力を鍛えるためでしょうか?度を越した練習量と有無を言わさぬ部内の縦割り構造が、ひいては高校生の健全な身体成長を歪め、自分で考え判断する力の向上に悪影響を及ぼしたりすることはないでしょうか。私たちは、日本の高校生の多忙な学校生活を否定するのではありません。異なる経験をさせてみることに価値があると考えています。周りの景色に目を奪われてふと立ち止まるぐらいの心の余裕をお子さまに持たせてあげてください。
「留学はお金がかかるから無理‼」これさえも、“経済的にみる高校留学”を真剣に検討したうえでの結論ではなく、イメージが先行しているように思います。前述した「トビタテ留学、JAPAN」をはじめ、私たちが実施するアメリカ公立高校交換留学プログラムやアカデミック・エクスチェンジ・プログラム、クラシックプログラムなど、留学費用をなるべく抑えるプログラムは数多く存在します。このようなプログラムならば、お子さまが国内の高校生活でかかる1年間の必要経費と1学年の留学費用を比較すると、その差額は思いのほか少ないことにお気づきになられると思います。その差額と留学がもたらす機会と成果を照らし合わせて、「それでもまだ留学は高すぎる」との結論となるならば、その判断は正しいのでしょう。保護者の皆様には、留学費用について少なくともそこまでは検討していただきたいというのが我々の願いです。
最後に「我が子の英語力、学力では留学は成功しないのではないか」という見方について述べます。私たちは、世界50か国から年間5,000名以上の高校生を、世界14か国の留学プログラムに参加させています。その中にはもちろん様々な生徒がおります。英語力でいえば、押しなべてヨーロッパ各国の生徒の英語力は高く、アジア圏の生徒の英語力には生徒によって大きな偏りが見られます。私たちが実施する英語圏6か国のホスト高校教員達を対象にした聞き取り調査によれば、日本人生徒の英語コミュニケーション力は残念ながら高くはありません。しかし、学業成績は各国留学生の中でも上位に位置し、とりわけ学校での学業に取り組む姿勢は高く評価されています。「日本人留学生を我が校に歓迎する」というコメントに至っては、ほぼ100%の結果が出ています。ここから導くことができるのは、「英語力の高低は、その生徒の評価の一部でしかない。」ということです。
英語を学びたいから留学するという理由が常にトップの日本人留学生が、自分の英語力が未熟だから留学しないという結論に達するのは矛盾以外の何ものでもありません。慎重さも美徳のうちですが、度が過ぎた慎重さは子供の可能性を妨げてしまいます。英語力は使い続ければ必ず伸びます。「学校の勉強で、本人が勉強すれば平均点はとれている。」という状況であれば、能力上の心配は不要です。
以上、留学を妨げているのではないかと思われる理由を挙げ、私たちの見解を述べてきました。異なるご意見やここに挙げなかった理由もあるでしょう。是非、保護者の皆様のお話をお聞かせいただき、ご一緒にお子さまの高校留学について考える機会をいただければ幸いです。